英祖(ヨンジョ)は思悼世子(サドセジャ)を米びつに閉じ込めるとき何を語ったか(再読版)

必死に命乞いをしたのだが……

英祖は意地になって、さらなる厳命を下した。
「たったいま世子を廃したのだが、史官はちゃんと聞いていたのか」
史官といえば正式な記録を残す官僚である。英祖は、自分の言葉を正式な文書に残すことをはっきりと要求した。
思悼世子はさらに英祖の前で許してもらえるように哀願した。




すると、英祖は驚くべきことを話し始めた。
「映嬪(ヨンビン/英祖の側室で思悼世子の実母)が余になんと言ったと思う? そなたがいかに世子にふさわしくないかを泣きながら訴えてきたのだ。もはやこれまでだ。そなたが自決しないかぎり、この国は安泰とならない」
それでも必死に思悼世子は命乞いをした。
「お願いです。命だけは助けてください」
英祖はそれを聞かずに息子を米びつに閉じ込めた。こうして思悼世子は餓死させられたのである。

文=康 熙奉(カン ヒボン)

英祖と思悼世子について紹介している『いまの韓国時代劇を楽しむための朝鮮王朝の人物と歴史』(康熙奉〔カン・ヒボン〕著/実業之日本社)

康 熙奉(カン ヒボン)
1954年東京生まれ。在日韓国人二世。韓国の歴史・文化と、韓流および日韓関係を描いた著作が多い。特に、朝鮮王朝の読み物シリーズはベストセラーとなった。主な著書は、『知れば知るほど面白い朝鮮王朝の歴史と人物』『朝鮮王朝の歴史はなぜこんなに面白いのか』『日本のコリアをゆく』『徳川幕府はなぜ朝鮮王朝と蜜月を築けたのか』『悪女たちの朝鮮王朝』『宿命の日韓二千年史』『韓流スターと兵役』など。最新刊は『いまの韓国時代劇を楽しむための朝鮮王朝の人物と歴史』

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