徳寿宮が誕生する過程には、朝鮮王朝の王位継承に関する逸話がありました。それは、1469年のことです。8代王の睿宗(イェジョン)は即位して1年あまりで亡くなってしまいました。あまりにも突然の死であったため、後継者は決まっていなかったのです。当然ながら、王朝内では次の王を誰にするかで大きな混乱が起こりました。
兄を慰労する私邸
王位継承問題で朝鮮王朝が混乱したとき、誰よりも迅速に行動したのが睿宗の母の貞熹(チョンヒ)王后でした。彼女は「自分の権力を行使するのに好都合」という理由で、睿宗の兄の二男を9代王・成宗(ソンジョン)として即位させました。まだ12歳で、彼には15歳になる兄がいたというのに……。
成宗は、祖母の思惑によって兄が後継者からはずされたことを気の毒に思い、兄を慰労する目的でりっぱな私邸を贈りました。
それがのちに徳寿宮になりました。(ページ2に続く)