- 2020-2-28
- 韓国時代劇の登場人物
- 朝鮮王朝, 正祖, 歴史
危篤に陥った正祖
貞純王后は、内侍(ネシ/王族に仕える宦官)を通して自分の意見を伝えさせた。
「今回の主上(チュサン/正祖のこと)の病状はかつての先王(英祖)のときと似ている。先王は回復したので、その当時さしあげた煎じ薬を詳しく調べ、医官たちで相談して良い薬をさしあげるようにせよ」
正祖の危篤を知って母の恵慶宮(ヘギョングン)も悲しみにうちひしがれた。
「東宮(正祖の息子で後の23代王・純祖〔スンジョ〕)が号泣しながらしきりと安否を知りたがっている」
今や王宮内のすべての人間が息をひそめて正祖の状態をうかがっていた。
医官が匙(さじ)を使って正祖に煎じ薬を飲ませようとしたが、とうてい飲める状態ではなかった。
再び脈を取ると、医官が床にひれ伏した。
「すでに望みがありません」
そう言うと、医官は声をあげて泣いた。
王宮内が騒然となってきた。
貞純王后が感情を露(あらわ)にした。
「主上の病状は中風のようなのだが、臣下の者たちは適切な薬をさしあげることもできないで、一体どういうつもりなのか」
左議政(チャイジョン/副総理に該当)の沈煥之(シム・ファンジ)が答えた。
「今や殿下は危篤状態になり、もはや申し上げる言葉を失っているような状況でございます」
その言葉に貞純王后が反論した。
「先王のときも昏睡状態から一夜で回復したことがあった。主上の病状も危篤とはいえ、まだそれほど時間が経っていないのに、なんということを言うのか」
恐縮しながら沈煥之が言った。
「今も継続して病状に合う薬をさしあげようとしています」
その言葉の通り、医官たちが正祖に人参茶などを飲ませようとした。しかし、すでに正祖は飲めるような状態ではなくなっていた。
(次回に続く)
文=康 熙奉(カン ヒボン)
名君だった22代王・正祖(チョンジョ)/朝鮮王朝国王列伝22
正祖(チョンジョ)を悩ませた恵慶宮(ヘギョングン)と貞純(チョンスン)王后!